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zoom RSS 『恋愛小節1990〜Girl's Side』 その8

<<   作成日時 : 2007/02/05 00:00   >>

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『恋愛小節1990〜Girl's Side』

第2章 栞の場合

その4



お兄ちゃんから、やっと電話がかかってきた。

そして。

お兄ちゃんとあたしは、明日の夜8時半に新宿アルタ前で待ち合わせたんです。


その日。

あたしは、約束の時間より、かなり早くアルタ前に着いた。


あっ。

お兄ちゃんだ。


でも。

あたしは、なぜかお兄ちゃんの姿を見ても前みたいにうれしくなかったんです。

どうしたんだろう、あたし……。


「早いね、お兄ちゃん!あたしも早いけど」

あたしは、精一杯の笑顔を作ってお兄ちゃんの前に立った。


あたし。

前みたいに、お兄ちゃんに素直に甘えることが出来なくなっていたんです。

お兄ちゃんの気持ちが、あたしに向いていないことなんてわかっていた。

でも。

あたしは、以前のようにお兄ちゃんに接しようと思ったんです。

せめて、今夜だけでも……。


新宿通り沿いのバーで、あたしはキーシュとアップルティーをオーダーした。

あたしは、楽しそうに、楽しそうに、そう見えるようにしていたんです。


「お兄ちゃん、お願いがあるの」

あたし、お兄ちゃんに、はっきりとこう言ったんです。

「最後に……連れて行ってほしいところがあるの」って。


明治通りを池袋の方に向かって歩きながら、あたしは、お兄ちゃんの手をとった。

「カップルなら手をつながなきゃ!」

あたしは、お兄ちゃんと手をつないで歩いたんです。


お兄ちゃんの手は、今日もとてもあったかい。

でも……。


いつの間にか、あたりはラブホテル街になっていた。

「わぁー。なんだか緊張するね」

あたしは、わざと明るい声を出した。


「お兄ちゃん、ここがいい」

あたしは、お兄ちゃんの手を引っ張って、そのホテルに入ったんです。


「プロジェクトC完了だね…」

お兄ちゃんは、あたしにそう言った。


あたしは、ベッドに腰掛けながら、お兄ちゃんになんて言おうかって思っていたんです。

でも。

ホントのことを言わないと……。


「……ウソだもん。ホントは、プロジェクトCなんてないんだもん……」

あたしの頬を、一粒の涙が流れていた。


あたしは、お兄ちゃんに見て欲しかったんです。

あたし自身を。

妹として、なんかじゃなく。


「ごめん、栞……」

お兄ちゃんは、そう言いながらあたしを抱きしめてくれたんです。


「栞ね、お兄ちゃんのことが本当に好きだったの……。いつも優しくて、何でも楽しそうに話を聞いてくれて……」

でも。

お兄ちゃんは、何も言ってくれなかったんです。


やっぱり、そうなんだよね。

お兄ちゃん、良く分かったよ……。


お兄ちゃんとあたしは、ベッドに並んで寝転びながら、長い時間話をした。

そして。

いつの間にか、始発電車が動く時間になっていたんです。


ホテルを出たあと、あたしはもうお兄ちゃんと手をつなぐのをやめたんです。

もう、終わりなんだから。

もう、甘えちゃダメなんだから……。

そう自分に言い聞かせながら。



新宿駅に着いた。

マイシティの階段で、あたしは立ち止まる。

そして、こう言ったんです。

「さようなら、お兄ちゃん……」って。


お兄ちゃんが、あたしを抱きしめた。

あたしは、ゆっくりと顔を上げてお兄ちゃんの目をじっと見つめた。

あたしは、ゆっくりと目を閉じた……。

そして。

お兄ちゃんとあたしは、最初で最後のキスを交わしたんです。


ありがとう、お兄ちゃん……。


あたしは……。

お兄ちゃんの、目が好き。

くっきり二重に、フサフサまつげ。


あたしなんかより、全然長い。

まばたきすると、バサバサと音がしそうなくらい。

きっと、マッチ棒だって簡単に乗りそう。


そんな目で、見つめられたとき。

あたしの胸は、キュンってして、熱くなったんです。


あたしは……。

お兄ちゃんの、そんな目で。

あたしだけを、ずっと見つめていて欲しかった。



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